私は、テニスが大好き。テニスをすることも好きだし、見ることも好き。どっちにしても、レベルが高ければ高いほど、楽しいと思う。だから、私は中学でも高校でも、男子テニス部に入った。私の通っていた学校は、女子も強いんだけど、男子の方が比べものにならないぐらい強かったから、マネージャーとして入部した。
中学のときは、幼馴染の赤也も男子テニス部に入った。赤也は、すごく向上心があって、もちろん実力もあった。だから、先輩方に気に入られ、その面倒見として、私も入れさせてもらった(それを言うと、赤也は強く反論してくるけど)。
そして、その経験を活かして、違う学校なのだけれど、高校でもマネージャーをさせてもらっている。

そんな中、私が1番見ていたいと思うのは、日吉のテニス。まぁ、そりゃ、好きな人が好きなことをやっている姿を見ていたいっていうのも、少しはあるけど・・・。それ以外に!日吉のテニスは、とても独特。だから、見ていたいと思う。
日吉の実家は、古武術の道場をやっているらしい。実際に見たことはないけれど、そう本人からも聞いたし、何よりあの柳先輩が言っていたから、間違いないと思う。・・・って、この判断は可笑しいか。
まぁ、とにかく、私が最初に日吉のテニスを見たのは、私たちが中学生のとき。その頃、私は立海という学校に通っていて、日吉は氷帝に通っていた。だから、私たちは敵同士だった。
そのとき、日吉と対戦したのが赤也。赤也を応援していた私だったけれど、初めて見た日吉のテニスに目が釘付けになった。

それは、今でも変わらない。部活中、私の目は自然と日吉のプレイに惹かれてしまう。・・・いや、ちゃんとマネージャーとして、他の部員も見てるよ?でも、何も考えていなければ、自然と日吉の方へ目が行くし、芥川先輩が丸井先輩のテニスを見てワクワクするように、私も日吉のテニスを見て楽しくなる。だから、少しでも見ていたくて、朝練や放課後の部活で、早めに練習し始める日吉を見るために、私も早めに準備をする。
今日は、かなり順調に準備できて、より長く見られそうだ、と本当に芥川先輩の気持ちがわかるくらい、ワックワクな感じでコートに向かった。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


黙々と壁打ちをし続けている日吉と、壁に当たって軽快なリズムを奏でているボール。そのギャップがまた心地良くて、思わずうっとり見てしまう。
まさに、美技に酔うとは、このことね。・・・って、それは跡部部長か!


「・・・・・・?」

「わ、ゴメン!邪魔した?」


一応、気付かれないように、後ろから見ていたんだけど、今、日吉はこっちを向いていた。気配がしたのかな?
いつの間にか、軽快なリズムは消えていて、日吉の持っているラケットの上に、ボールは静かに乗っていた。


「別に。・・・何してるんだ?」

「何って・・・。日吉のテニス、見てただけ。」

「そんなに暇なのか?」

「暇じゃないよ!わざわざ、仕事を早めに終わらせて、見に来たんだから!!」

「・・・・・・俺を見るために・・・?」


・・・はっ、しまった!からかい口調の日吉に言い返そうと、思わず本音を言っちゃった!!あぁ、どうしよう、どうしよう・・・。もう、いいや!開き直ろう。


「そうだよ。日吉のテニス、見たいもん。」

「・・・テニス・・・・・・か。・・・そんなのいつでも、見られるだろ?」

「部活中は、なかなか見れないの。だから、こうしてじっくり見られるのは、日吉が自主練してるときぐらいなんだよ。」

「じっくりって・・・。見ているだけで、面白いのか?」

「まぁね。するのも好きだけど、見るのも好きだし。それに、日吉のテニスは特に見ていたいから。」

「・・・なんで?」

「なんでって・・・。なんかね、ワクワクするの。日吉の演武テニスから打ち出されるボールは、どこに飛んでいくのか予測しにくいし。水の流れるような日吉の動きも綺麗で・・・。でも、武術という強さもあって。すごく凛々しいし、見ていて・・・・・・・・・。うわ、何か、すごく語っちゃった!恥ずかし〜・・・。」


見ていて、惚れ惚れしちゃうの!なんて、思わず力説しそうになった自分に気付いて、セーブをかけた。・・・けど、既に結構、恥ずかしい。


「・・・・・・・・・そうか。」


日吉も、ちょっと照れたみたいで、少し目を逸らした。・・・・・・そんな顔されたら、余計に恥ずかしくなっちゃうよ!!・・・でも、そんな日吉も可愛い・・・・・・。
直視できなくなった私が視線を逸らすと、誰かが部室に向かうのが見えた。
そっか。そろそろ、戻らなくちゃ。


「私、そろそろ行くね。邪魔しちゃってゴメン。」

「邪魔じゃない。」


私は、もう戻ろうとしていたのに、思わず、はっきりと「邪魔じゃない」と言ってくれた日吉の方を振り返ってしまった。
そこには、もう壁の方に向き直していた日吉の背中が見えた。


「邪魔じゃない。だから・・・、いつでも来い。」

「うん!!ありがとう!」


日吉が後ろを向いていてくれて良かった。今の私は、かなりニヤついた顔になっていると思う。・・・いや、自分でも頬の辺りが上がっている感覚があるから、間違いなくニヤついている。しかも、ちょっと顔が熱いし。
でも、思いっきり嬉しそうなトーンで返答をしてしまったことには変わりない。・・・まぁ、それぐらい大丈夫だよね?
そう考えながら、また壁打ちを始めたらしい、日吉が打つボールの音に合わせるかのように、私はスキップまじりで、マネージャー業に戻った。













いやぁ、本当に日吉くんのテニスはカッコイイと思います。結構、「何、この格好?!どうすればこうなるわけ??!」とも思いますが(笑)。でも、基本的にはカッコイイです・・・、たぶん(←)。

それにしても、この2人はどれだけ早く来てるんでしょうか・・・。マネージャーとしての準備が終わった頃に、ようやく他の誰かが来るなんて・・・・・・。それとも、みんなが遅いんでしょうか?
・・・まぁ、その辺は深くツッコまないでやってください(苦笑)。

('09/11/22)